赤サンゴのビーズ6つ、古代から近代まで、護符としてのサンゴの歴史を伝えるビーズ

10年ほど前に入手した、赤サンゴのビーズです。左端のサンゴは、切り株状の形で、片側の上部と下部に細い線、また、上面には穿孔の他に途中までの空洞が見られ、濃い赤で彩られています。左端から2つめは、L字型で片側に細い縦線が見られ、3つめは急須状で片側に細い縦線があり、自然の織りなす紋様を描きます。他の3つは、濃い赤の円柱形で、とくに右2つは濃い赤色で、また、中央と右2つには小さな突起と縦線が見られます。3つとも底辺には黒い年輪状の輪が見られます。
　本品の胎はなめらかで、縁も丸みを帯び使いズレもみられ、若干の時期は経ていると思われます。本品の赤や濃い赤は、もともとの色合か染色のためかは不明です。
　世界各地でサンゴ、琥珀、トルコ石は、護符として希求されました。赤いサンゴは、血、火、光りを、黄の琥珀は土地、青のトルコ石は水や空、空気を意味するとされます。3色の、あるいはいずれかのビーズを着ければ、精神世界と結びつき保護・護符の力を得られるとされました。
　西アフリカのベニンでも、赤いサンゴ・ビーズが王族や花嫁などの首を飾り、赤い血は支配や地位の印とされました。北アフリカの遊牧民ベルベル人も、赤いサンゴと大きな琥珀の連に、銀のビーズを身につけます。
　サンゴと琥珀の選好は、アジアではチベット、ネパール、ブータン、そして中央アジアや中国にも見られます。チベットの人々は深い赤色サンゴを好み、肝臓などの熱を取って熱を下げると見なします。
　サンゴは、ローマ時代にも、チュニジアなどマグレブの海岸でも収集され、17世紀にはチュニジアの海岸では、サンゴ採集が再開されました。
　17世紀には、地中海全体でサンゴ採集が大規模に進み、この時期に、アジアに大量のサンゴが流入しました。ヨーロッパとアジアの交易が増大し、ネパール、チベット、中国などの人々はサンゴに熱狂しました。地中海から採集された「サンゴは、ヨーロッパで製造され、最も安定的に販売できる商品」と記され、英国人やイタリア商人もこの恩恵を手に入れました。チベットなどで、サンゴの急速な普及に、こうした交易に影響されました。
　本品は、古代から近世の時期に、サンゴがたどった経緯と世界の交易との関連を語れそうな、赤い「護符」です。
　サイズ　図のように並べて約105㍉。左端　高さ　約14㍉　幅（底辺）　約20㍉　孔径　約3㍉

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